――それでも、相手はあなたを想っているかもしれない。
すれ違うときや帰り際に挨拶をした。
彼女が一人でいるときに話しかけた。
帰り道の信号待ち、隣に並ぶ一歩を踏み出した。
休憩室で、何気なく隣の席に座った。
ぎこちなくても、少しずつ距離を縮めようとしていた。
好きな人ができてから、
あなたは少しずつ前に進んできた。
不器用なりに、心を動かし、行動して、
ちょっとずつ距離を縮めていった。
同時に、あなた自身の心も変わっていった。
仕事が、以前よりも丁寧になった。
人に話しかけるときの口調が、やさしくなった。
長いあいだ嫌いだった人を、恨むこともなくなっていった。
過去に抱えていた小さな怒りやわだかまりも、
いつのまにか、心の中から静かに消えていった。
あの人を想うたびに、
自分が少しずつ、優しい人間になっていく気がした。
それはきっと、恋があなたの心を育ててくれた証。
でも、ある日――
ほんの些細なことで、
心が一気に崩れてしまいそうになる瞬間が訪れた。
それもそのはずです。
毎日が、不安の連続だったから。
うまくいっている実感もないまま、
確かな手応えもないまま、
それでも、あなたはずっと頑張っていた。
だからこそ、
たった一つの何気ない言葉や、ふとした態度が、
自分を全否定されたように感じてしまう。
本当は、崩れないように、崩れないように、
必死で立っている状態だったのに――
友達と楽しそうに話していた。
少し、自分を避けるように見えた。
上司と笑っていた。
「きっと私のこと、嫌いなんだ」
そんな声が、心の奥で何度も響く。
たった一つの行動で、
心が崩れそうになるくらい、
あなたはその人を、真剣に想っている。
でも、よく考えてみてください。
あなたのことを嫌いになる理由が、本当にあるでしょうか?
そして、自分に好意を寄せてくれる人を、あえて嫌う人なんて、ほとんどいないのです。
むしろ、嬉しいと感じる人の方が、きっと多い。
だからこそ、あなたの気持ちを大切にしても、大丈夫です。
これまで頑張ってきた自分を、否定しなくていいんです。
たとえ心が「99%ダメだ」と叫んでも、
1日だけ、静かに観察してみてください。
もしかするとその日は、
たまたま気を遣って距離を置いただけかもしれない。
たまたま仕事の話をしていただけかもしれない。
そして――
あなたが思っている以上に、
相手はあなたのことを気にかけている可能性もあるのです。
自信がなくても大丈夫。
不安で揺れても、あなたの想いは、
必ず、どこかで誰かの心に届いています。
そしてもう一つ、大切なこと。
たとえ不安でも、勝手な想像だけで、
相手を遠ざけたり、責めたりしないでください。
「どうせ嫌われてるんだ」
「それなら、私の方から嫌ってやる」
――そんなふうに、まだ何も起きていないうちから、心を閉ざさないでください。
あなたは、毎日、勇気を出して頑張っていた。
だからこそ、どうか、ひとりで終わらせないで。
恋が終わるときは、相手と向き合ったその先にあるものです。
まだ始まってもいないなら、終わらせる理由なんて、どこにもありません。